評が出なかった曲を、翌年スヴェンがかけた
Bedrockのレーベル担当者は、音楽誌Mixmagにヴァイナルを6枚近く送った。Mixmagに評は一つも出なかった。翌年、スヴェン・ヴェート(Sven Väth)がこの曲をかけ始めると、今度はMixmagのほうから、スヴェンがかけているガイ・ガーバー(Guy Gerber)の新曲はいつ出るのか、と問い合わせてきた。レーベルを率いるジョン・ディグウィード(John Digweed)は、そのときの返事をこう覚えている。1
"We told them it was already out, and we've already sent you six copies!"(もう出てますよ、6枚送りましたよね、と答えたんだ)1
ロンドンのクラブfabricのサイトで、Bedrockの20周年を前にディグウィードがレーベルの要の5曲を選んだ記事での回想だ。出た当初はじわじわ火がつく曲(slow burner)だったが、自分たちはこの曲の出来を本当に信じていた、と彼は言う。1
2004年の秋
「Stoppage Time」は2004年10月、Bedrockから出た。2 11月15日、Resident Advisorのロビー・Y(Robbie Y)は、この曲の二つのミックスが、ここ数か月、レーベルを率いるディグウィードのもとで効いている(doing the damage)と書いた。オリジナル・ミックスは、しっかりしたビートからブレイクに入って主のリフが回り出し、そこからピークタイムに達する曲で、繰り返す旋律の音色とファンキーな響きがあとから加わるという。オリジナル・ミックスの段は、こう結ばれる。
"Big room track here!"(大きなフロアのための曲だ)2
裏面のDave Gardner & Saharz Haoman 17 Mixは、同じく大箱向けで、もう少し不穏だと書いている。2 Beatportの表示では、オリジナル・ミックスは10分50秒、127 BPM、Bマイナーで、ジャンルの欄はProgressive House。3
翌年の録音
2005年のヴェートの録音には、曲目表の最後の行がこの曲になっているものがある。投稿型の曲目表MixesDBでは、7月16日のSensation Whiteの録音も、12月29日のアムステルダムのClub 11の録音も、最後の行が「Guy Gerber - Stoppage Time」で、どちらの表も「complete」(揃っている)と表示されている。45 Mixmagが問い合わせてきたという翌年に、ヴェートの録音の終わりにはこの曲があったことになる。二つの曲目表とディグウィードの回想を重ねた読みだ。
2023年11月、Bedrockの25周年にBeatportalで好きな15曲を選んだときも、ディグウィードはこの曲を入れ、一言だけ添えた。6
"This is just one of those tracks that never fails on the dance floor."(ダンスフロアで決して外さない、そういう曲の一つだ)6
fabricの記事では、今も何度も何度もリクエストされる曲だと言っていた。1 送った6枚が一つの評にもならなかった曲を、フロアはその後も求め続けている。
出典・注
[1] Cornerstone Tracks: John Digweed selects 5 essential Bedrock cuts, fabric London。Mixmagとのやりとりの回想と引用、slow burner、今もリクエストされることに使った。記事の日付と筆者名は本文に無く、Bedrockの20周年の祝いを翌週に控えた時期の記事とだけ分かる。ヴェートがかけ始めたという話はディグウィードの回想で、ヴェートの側の報告ではない。ヴェート本人がこの曲について語った言葉は見つけていない。
[2] Robbie Y, Guy Gerber - Stoppage Time, Resident Advisor、2004年11月15日。発売(2004年10月、Bedrock Records、BED55)、レーベルを率いるディグウィードのもとで効いているという記述、両ミックスの評と引用に使った。Beatportの表示の発売日は2004年11月1日で、RAの表記と1か月ずれる。
[3] Beatport, Stoppage Time (Original Mix), 曲のページの表示。長さ・BPM・キー・ジャンルに使った。ここで扱う録音(10分51秒)とは長さの差が1秒以内で、同じオリジナル・ミックスと見ているが、盤面では確かめていない。
[4] 2005-07-16 - Sven Väth @ Sensation White, MixesDB。セットの最後に並ぶ曲に使った。利用者が書き込む曲目表で、completeは録音の曲目についての表示で、セット全体が録られているかは分からない。録音は56分29秒で、放送された一部の可能性がある。最後の3行を含む数行には時刻が入っておらず([??])、並びが演奏順どおりかも表からは確かめられない。どのミックスかは書かれていない。開催地は頁の本文に無い。
[5] 2005-12-29 - Sven Väth @ Club 11, Amsterdam, MixesDB。セットの最後に並ぶ曲に使った。利用者が書き込む曲目表で、盤の表記はBedrock 055。completeは録音の曲目についての表示で、セット全体が録られているかは分からない。録音は1時間42分50秒で、表に時刻は入っていない。
[6] John Digweed, Cameron Holbrook, John Digweed Selects 15 of his Favorite Bedrock Records Tracks, Beatportal、2023年11月21日。25周年の選曲と一言に使った。