言い争いの盤の曲に、二十年後の二人が戻る
2024年10月11日、ディープ・ディッシュ(Deep Dish)は10年の休止を終えると発表した。シャラム(Sharam)とダブファイア(Dubfire)の二人は、この20年近くの大半をそれぞれのソロの仕事を育て固めることに費やしてきたが、今こそ二人の作風に新しい創造性を注ぐときだと感じている、と言う。そのうえでこう続けた。
"These new updates, which were made with love and reverence for the original versions, also capture where our new sound is headed."(この新しい版は、元の版への愛と敬意をこめて作ったもので、僕らの新しい音が向かう先もとらえている)1
二人は10年ぶりにスタジオに戻り、自分たちの代表曲を作り直していた。なかでも「Flashdance」と「Say Hello」の新しい版は、最近ロサンゼルスで開いた、とても実りの多い制作の最初の成果だという。1
「Say Hello」が生まれた頃
「Say Hello」は、2005年7月12日のアルバム『George Is On』の7曲目に入っている。2 DJ Magのベン・カーデュー(Ben Cardew)は2023年3月の振り返りで、二人は「Flashdance」や「Say Hello」のような曲で商業的な大当たりを取ったと書く。第2作の『George Is On』もまたヒットしたが、二人は録音のあいだに仲たがいし、スタジオでは音楽を作るより言い争う時間のほうが長く、2006年に別れてそれぞれのソロに進んだ。その後は2014年に短く再結成しただけだった、と。3 その2014年の一曲は「Quincy」の稿にある。
深い版と、山場の版
「Goes Deep」と名づけた版は2024年11月29日にArmada Musicから出た。45 発売を伝えたRave Jungleの記事は、原曲の夢見るような空気を今の進化したアフロテックの流れに見事に移し替え、耳に残る歌を控えめな3ステップのキックのパターンで包み、打楽器を細かく散らした、と紹介している。4 翌月にはもう一つの「Goes Peak」版が続いた。DJ Magのクリスチャン・イード(Christian Eede)は、Goes Peakを、ピークタイムのフロアに合う、ずんずん進むテクノの弧を描く版とし、先に出たGoes Deepを、原曲をより深く、アフロ・ハウス寄りの方向へ連れていった版と書き分けている。6 Beatportの表示では、Goes Deepの長い版は124 BPM、Dマイナー。7
同じ記事でイードは、二人がその月の後半にロンドンのThe Causeで、10年あまりぶりのロンドン公演に臨むと伝えた。6 休止明けの発表で二人は、特別な公演と期間を限ったレジデンシーで、ひそかに作ってきた新しい曲を試すつもりだと話していた。1
投稿型の曲目表MixesDBでは、2025年1月31日のオースティンのセットで、始まって75分ごろにGoes Peakの版が鳴っている。8 1年あまりのち、2026年3月28日のマイアミ、ウルトラ・ミュージック・フェスティバル(Ultra)のベイフロント・パーク。ディープ・ディッシュのセットの曲目表には、録画の始まりから31分ごろにGoes Deepの版が載っている。9 スタジオで音楽を作るより言い争う時間のほうが長かったという盤の一曲が、二十年あまりのち、二人の名のセットで鳴った。
出典・注
[1] Armada Music, Deep Dish Announce String of Residencies and New Versions of Their Classics; Enlist Agency, Management & Label Partners, Armada Music、2024年10月11日。休止の終わり、二人の言葉と引用、ロサンゼルスの制作、小さな会場の公演と新曲を試す話に使った。レーベルの発表文で、二人の言葉はその中の引用。
[2] iTunes Lookup: Say Hello (Album Mix), Apple(英国)。アルバム名、発売日(2005-07-12)、7曲目であることに使った。長さ274,777ミリ秒。Armadaは2024年にこのアルバムを配信に戻したと発表している([1])。この登録がそのときのものかは確かめていない。
[3] Ben Cardew, How Deep Dish's 'Junk Science' pushed house music into new territory, DJ Mag、2023年3月23日。商業的な成功、第2作の録音中の仲たがい、2006年の解散、2014年の短い再結成に使った(筆者の地の文)。カーデューは、それより前の工業的な作風を好んだファンにとっては、そこから下り坂だったとも書いている。
[4] Marco Di, Deep Dish refresh 2005 hit 'Say Hello' with 'Goes Deep' Remix, Rave Jungle、2024年11月30日。発売日(「today, November 29th」)と紹介に使った。宣伝文に近い書きぶりの紹介。Goes Peakの発売を、この記事は冒頭で「12月」、末尾で「12月6日」と書くが、DJ Mag([6])の記事は12月13日付。
[5] Deezer, Say Hello (Deep Dish Goes Deep Remix), APIの登録値(曲のページは読めず、トップへ転送された)。発売日2024-11-29、長さ199秒に使った。この稿の曲はこの短い版で、Appleでは2024年12月13日の「Say Hello - Single」(2曲入り)の1曲目、199,975ミリ秒として登録されている(iTunes Lookup、id 1776327159)。
[6] Christian Eede, Deep Dish reimagine 2005 hit 'Say Hello' with new remix: Listen, DJ Mag、2024年12月13日。二つの版の書き分けと、The Causeでのロンドン公演に使った。記事の対象はGoes Peakの版。
[7] Beatport, Say Hello - Deep Dish Goes Deep Extended Remix, 曲のページの表示。BPM・キーに使った。長さ6:45、ジャンルの欄はMelodic House & Techno、発売11/29/24。短い版の表示ではない。
[8] 2025-01-31 - Deep Dish @ The Concourse Project, Austin, USA, MixesDB。行の頭の分([075])に使った。利用者が書き込む曲目表で、「incomplete」の表示がある。録音の長さは2:54:18。
[9] 2026-03-28 - Deep Dish @ Ultra Music Festival, MixesDB。行の頭の分([31])と会場名(Bayfront Park)に使った。録画の長さは1:31:21で、セットそのものの長さは書かれていない。9分ほど前の[22]には、ダブファイアのソロ名義の「Dubfire - Roadkill (MEDUZA & ESSENTIA Remix)」の行がある。「incomplete」の表示がある。